2012年10月23日

今日は22年間教えた補習校時代の思い出話です。

週に一度の我が職場、中1の子供達と一緒に、児童文学作家吉橋道夫氏の
「ぬすびと面」という話を読んだときのことです。

狂言の面打ち師が、これまで誰も打ったことが無いという「ぬすびと」の
面をどうしても打てないでいる。このぬすびと面は、狂言の内容からして、
「どこか滑稽で間が抜けており、それでも一目見ただけで人を震え上がらせ
るような顔」でなければならない。

そんなある夜、面打ち師の家に恐ろしい顔をした盗人が押し込む。しかし、
どういうわけか、物は盗らず、代わりに赤ん坊を押し付けて行ってしまう。
うむと気張った恐ろしい顔の裏に、もうひとつの別の顔があるような気がし
て、「これや、この顔や!」とその時の盗人の顔をしっかり記憶に刻みこん
だ面打ち師は、ようやくノミを振り上げ面を仕上げる。

壬生大念仏狂言の始まるその日に、竹矢来を組んだ特別の場所に、牢屋敷
の囚人達も集められると聞き、面打ち師とその女房は、もしかしたら件の盗
人もその中にいるかもしれぬ。それなら一目、無事に自分達に育てられてい
る子を見せてあげようと連れて行く。

ところが、肝心のその盗人は、チラとこちらをみただけど、何のかかわりも
ないという顔をして、うむと気張って座っている。

拍子抜けした面打ち師が役人にその盗人のことを訊ねると、
「ちょいと、変わったことをやりよって。」盗んだのではなくて、間引き
されそうになった子供を助けて、育ててくれそうな家へ無理矢理押し付け
て配って回った、とのこと。

面打ち師は改めて、この世の、どうしても許しておけないことに対する、
盗人の、怒りを込めて人々を睨みつけている顔を見、もう一度「ぬすびと面」
を打ち直そうと思う。(要約spacesis)


ざっとこういう話なのですが、さて、時代物の物語の中に、海外で生まれ育
つとどうしても耳慣れない言葉が出てくるわけでして、「狂言、竹矢来、奉
行所、間引き」などがそれです。
説明が「奉行所」に及んだとき、「今で言えば警察ですね。」と一言で終わ
れるものを、亡くなった母の影響で子どもの頃は時代劇や講談が好きだった
わたし、話の成り行きで、ついついお奉行様までいってしまいました^^;

お奉行様といえば言わずと知れた遠山の金さんこと刺青判官!
海外に在住する子どもたちのほとんどは、現代物の日本マンガやビデオアニ
メは見るものの、時代物はまずなく、当然知るわけがございません。
そこでわたしはインスタント講談師に(笑)

着流しで市井にその身をしのばせ、悪漢どもを退治。最後はお見事、片肌
脱いで

「えぇぇい、往生際の悪いヤツめ。この桜吹雪がお見通しでぇい!」

とご存知18番。

日光江戸村「遠山の金さん」
2009年子供たちと一緒に行った日光江戸村でのシーン
(↑大丈夫、大丈夫^^なんぼなんでもこのわたし、片肌脱いだわけでは
ありません^^)

で、最後が「これにて一軒落着~。」と終わるのです、と講談が終わった
ところで、ジリジリーと授業終了の鐘も鳴り(笑)

すると、ポルトガル生まれでポルトガル育ちのY君、
「学校に遠山の金さんのビデオないの?」と来たもんだ。
うん、分かる分かる、その気持ち^^見て見たいもんだよね^^
残念ながらまだ日本でその番組が放映されてるかどうかも、分からない。

○HKの大河ドラマは古いものではあるけれど、結構そろっているたものの、
あれを見こなすのは、彼らには少し難しい。
しかし、毎回のストーリーもほぼ同じで筋を追いやすく、勧善懲悪の時代物
というのは、この「遠山の金さん」を始め「銭形平次」なども、痛快でここ
にいる子供にも受けるのではないかと思うのは、わたしだけだろうか。

かつて、我が娘に、「任侠清水の次郎長、森の石松、金毘羅代参」三十石
船のくだりを話し聞かせたことがある。

旅ゆけば、駿河の国に茶の香り~と始まる広沢とら造の浪曲、

相手を石松とは知らぬ客、清水一家で一番強いのを忘れてたと石松の名を
最後にあげる。内心大喜びの石松。

石松「呑みねえ、え、オイ。鮨を食いねえ。江戸ッ子だってねえ」
客「神田の生まれよ」
石松「そうだってねえ、いいねえ。……ところで石松ッてのはそんなに強えか」
客「強いのなんのって、あんな強いのは二人とはいめえ」
石松「おい、いくらか小遣をやろうか。……なに、あるのかい。
   そうかい。そうかい。 ふーん、石松ってのは、そんなに強いかえ」
客「ああ、強え。強えは強えが、しかし、あいつは、少々頭のほうが
  薄いときてる」
石松「なに……頭のほうが薄いだと」
客「馬鹿だよな。みんないってるぜ。あのへんの子守りでさえもが唄って
  るぜ。聞いてみな。東海道じゃ一等バカだ」
石松「馬鹿だとねエ。べらぼうめ。へッ。どんな唄か聞かねえが、お前さん、
   その文句知ってるのかい」
客「知ってるともよ。聞かしてやるか」

お茶の香りに東海道、清水一家の石松はしらふのときはよいけれど、お酒
呑んだら乱れ者、喧嘩早いが玉に庇。馬鹿は死ななきあ、なおらない~


やはり彼女も面白がって、その映画を観てみたいと言ったものである。
その語呂合わせ、痛快さに、カッコいいと心弾ました子供の頃の自分をY君
にチラと重ねて見たような気がしたのでした。

ここまで書いて思い出しましたことがあります。
昔、ポルトのテレビ局が取材に来たときのこと。

その日は日本の知人が送ってくれた「声に出して読みたい日本語」を子供
たちに紹介しがてら、中の「白波5人男」の一人、弁天小僧菊之助が泥棒の
正体を現して開き直って言うセリフ。子供らを前に、
   
   知らざぁ言って聞かせあしょう。
   浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の
   種は尽きねぇ七里ガ浜ぁ。
   ~~~(略w)
   名さえゆかりの 弁天小僧菊之助たぁ、おれがことだぁ~あぁ。

と、歌舞伎調で、首も振ってジェスチュアーよろしくやっていましたら、
ギョ
廊下からカメラがジィ~ッと回っていたのに気づき、赤くなったり瞬時青く
なったりして大いに困った経験があります。
幸いその場面は放映されず、数秒のインタビューが出たのでよかったものの、
放映日が来るまで気が気でならず生きた心地もしませんでした

そうなんです、こういう七五調の、ビシッと決まったセリフがスカッとして
わたしは大好きなのですが、皆様はいかに。


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コメント
黒澤明や溝口健二の時代物などはポルトガル人の学生に見せることがありますが、金さんや黄門様のようなベタベタの勧善懲悪劇を見せる機会はなかなかないですね。ソフトも簡単には手に入りませんし。ただ「必殺仕事人」は一度だけ見せたことがあります。個人的な印象ですが、特撮が好きな人は必殺シリーズにも親和性があるように思います。
2012/10/24(Wed) 09:39 | URL | pinheiro | 【編集
>pinheiroさん

おお、「婿どの」ですか!
「Kill Bill」が人気がありましたから意外やいけるかも知れませんね。

最後は正義が勝つ勧善懲悪劇は後味がよくてわたしは好きなのですが、今の世の中では迎え入れてもらえないかしら?

わたしは生徒さん達の日本語がもっとレベルアップしたら、彼らにTVドラマ「電車男」を見せてみたいと思っているのです。
理由は「自分が結構楽しんだから」なので、いい加減なものですv-408
2012/10/24(Wed) 18:45 | URL | spacesis | 【編集
時代劇といえば
池波正太郎原作の「鬼平犯科帳」や「剣客商売」なんかいかがでしょう。
時代考証がしっかりしてますし、昔の日本の生活や家、食事など細かな描写があります。

幸いどちらもDVD化されていますよ(^_^)
2012/10/24(Wed) 20:24 | URL | なみ | 【編集
>なみちゃん

ありがと^^

でも日本のDVD、こちらではPCでしか見られないので難しいです。

私自身は教室での教材として動画はほとんど使いませんが、生徒にYoutubeなどを案内します。

時代物は日本語学習者にはなかなかに難しいですね。
2012/10/25(Thu) 11:39 | URL | spacesis | 【編集
私自身は金さんや水戸黄門や大岡越前も好きです。あの安定感は一種の様式美ですね。何度も見せると、年長のポルトガル人の中には飽きる人も出てくるかもしれませんが、一回や二回見せるだけなら何の問題もないと思います。

池波正太郎原作の二作はもはや別格ですね。特に鬼平はあれ以外のキャストが考えられない究極の完成度ですね。剣客はもう少し小柄な老人をイメージしていましたが藤田さんも好きなので満足しています(中村版は残念ながら未見です)。唯一の欠点はあまりに飯がうまそうで和食が恋しくなることでしょうか。
2012/10/25(Thu) 18:34 | URL | pinheiro | 【編集
>pinheiroさん

鬼平はわたしも好きでした。亡くなった母が時代ものが好きで、毎夜習慣の読書で枕元にはいつも「池波正太郎」の本が置かれていました。テレビは帰国時にその母との付き合いでよく一緒に見たものです。

わたしは近年、時代小説を楽しんでいます。帰国するたびに今度こそはと思いながら日本語関係の資料本で旅行カバンは一杯になり結局持ち込めていない作品に「大菩薩峠」があります。

何と言っても41巻、子供の頃に観た片岡知恵蔵の机龍之介が忘れられずに未だにひきずっているが故です。

ところで、pinheiroさんが時代劇ファンとは意外でした^^




2012/10/28(Sun) 19:56 | URL | spacesis | 【編集
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