2015年2月13日  

考え込まされるような本を読み終えました。

2010年に出版されたNHK「無縁社会プロジェクト取材班」による「無縁社会」です。

book

これは同年1月に放映されたNHKのプロジェクト番組でもあるそうです。

「ひとりぼっちが増え続ける日本」を序章に、各章が、行旅(旅行の間違いではない)死亡人、薄れる家族の絆、単身化の時代、社縁が切れた後に、おひとりさまの女性たち、若い世代に広がる無縁死の恐怖、と、中高齢者に限らず、若者たちをも含む、現代の日本社会の索漠たる一面を表すサブタイトルです。

行旅死亡人とは、警察でも自治体でも身元がつかめなかった無縁死を指すのだそうだ。このような死を迎えた人を実はわたしは一人知っています。彼のことについては後述したい。

今春、ポルトガル在住37年目に入るわたしは、母国で暮らした月日よりこちらでの生活の方が長くなりました。時に、日本語学習をする若い生徒たちを相手に、「昔はね、」と彼らの知らないポルトガルを話し聞かせる自分がいることに気づいて、しみじみとポルトガル在住の長い時間を感じることがあります。

母国に関しては帰国時のわずかな期間で現在の日本(と言えば大げさになるが)を垣間見るのが、関の山。よって、わたしの中の日本は、パソコンを自由に使って、ネット新聞を読めるようになる時期まで、1960年代から1980年代で時間が止まっていたのでありました。

我が子たちに語り継いできたのはその時代の日本で、そういう日本に憧れて、モイケル娘は日本の大学受験を目指したのですが、日本に住み始めてしばらくたったある日、彼女がボソッとわたしにつぶやきました。
「おっかさんから聞いてきた日本とちがう・・・・」

さもありなん。ネット新聞を読むにつけ、いったい日本はどうなっていくのかと、自身で分からなくなり、
子供たちが住むゆえ、益々母国の先行きに大きな不安を覚えるこのごろだというのが正直な気持ちです。

プロジェクトは、家庭より仕事を優先し、熟年離婚。やがて会社との縁が切れた、つまり定年退職で仕事と言う社会とのつながりがなくなったとたん、無縁化してしまったという男性から、就職氷河期で非正規雇用、未婚の都会の一人暮らしの女性、孤独死、悲惨な結末の可能性を秘めるひきこもり等を取り上げながら、「無縁死」や「孤独死」は、何もごく一握りの人たちに起こることではない。親子や兄弟などの家族が離れて暮らすという今の時代の住み方の中で、わたしたちの周囲でも起こりうることだと警鐘を鳴らしています。

同時に、すさまじい勢いで進む高齢化、雇用と家族の崩壊という現実が水面下で想像をはるかにしのぐ勢いで進行していると訴えています。

家族に囲まれ黄泉へと旅立つ最期を終えるのが今まではごく当たり前であったことは幸運のひとつだという時代が目の前に来ているような気がして、切実にこの本に反応してしまった今回のわたしであります。

親子たりとも「歳をとって迷惑をかけたくない」といった本の中の言葉が気になりました。わたしはこの言葉をこれまでに周囲の同年代の人たちから何度か聞いているのです。「親子の間で迷惑とはなんだろうか」と、その言葉の意味を考えるとき、日本の社会はもはや家族の間にても、それぞれに「個」の責任が求められるようになったのだろうかと、いささか愕然とするのです。

弱い者へのいたわりを忘れ、他人に興味を持たない自己中心の社会が、「家族」というものをどんな風に定義していくのだろうか。近年にない衝撃をこの本から受けました。

本題、ブログで取り上げるのに躊躇しながら書いたもので、文章にちぐはぐなところがあると思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

最後に、つい先だって見て、命とはかくも素晴らしい奇跡であるのかと感動した「Miracle of Life(生命の神秘)」受精から出産までのCG動画のリンクをはります。

http://spotlight-media.jp/article/113137193906920330?utm_source=facebook&utm_medium=social&utm_campaign=own_page

写真の説明から始まり、CG画像はページの最期にあります。

We are all the miracle。わたしたちはみんな奇跡の結果なのだ。
この本を読んだ後のCG動画は、「家族」という言葉に捕らえられ、頭の軸がグラグラぶれそうになっていたわたしにとって大きな感動でした。

下記は、上述の無縁死を迎えた知人についてのエッセイです。よろしかったら読んでください。

あの頃、ビアハウス: 「A.D.」

アサヒビアハウスの常連で名物男の一人に「AD」と皆から呼ばれていたおじさんがいました。毎日顔を出すわけではないのですが、ちょっとした風貌で人気者でした。その風貌と言うのが、 いつも広島カープの赤い帽子をかぶり、ガニまたで歩く足に履く赤い靴だけはやけにピカピカ光っているのです。
  
けっこうなお歳で当時はもう70近くだったかも知れません、小柄な人でした。赤い帽子をとると頭はこれまた靴と同じくツッルツルのぴっかぴか!

よく気をつけて見ると、両目がアンバランスなのですね。それで片足が少し不自由で、足を引きずって歩いていました。若い頃はボクサーだったと聞きました。

多く話す人ではないのですが、話し始めると江戸っ子弁かと思われるようなべらんめぇ調が入ってきます。^^顔いっぱいに浮かべる笑みは、どこか少年のような無邪気さがあってとても魅力的な小さいおじさんでした。
  
独り身だとのことで、当時は大阪のどこかのボクシング・ジムに住んでいると噂されていました。が、ADについては、誰も多くを知らないのです。他の常連たちのように9時半までの長居をしたことはなく、ビールを1、2杯飲んだ後、片足をひきずって地下にあるビアハウスのドアを出て行くADの背中には一抹の寂しさが漂っている気がしてならないのでした。

ビアハウスの歌は6時半から30分間が第1ステージ、歌姫は30分休憩です。7時半から第ステージで再び3分の休憩、そして8時半からの30分が第3ステージで、ステージの終了時には、わたし達二人の歌姫が合唱で「Auf Wiederseh´n」(アウフ・ヴィーダゼーン=ドイツ語、また会いましょうの意味)と、ドイツ語で歌い、マイクで挨拶をして9時に終了です。ラストステージの「アウフ・ヴィーダーゼン」についてはいずれ綴るつもりです。

ステージが終わり休憩に入ると、わたしは呼ばれもしないのに両腕に自分の歌の楽譜を抱えて、時々、ADの立ち席まで行ったものです。(彼はけして席をとりません)
 
 「おじさん、元気?」と声をかけると、決まって、
 「おお、あんたも元気かい?」
  
ADのアンバランスな目が、なぜかウインクしたように見えたりするのでした。

あれからふた昔以上が過ぎていましたが、ポルトガルに来てからこのかた、一度もADのことを思い浮かべたことはありませんでした。

それがしばらく前のある日、ひとづてに、そのADのことが耳に入りました。ADが何歳で、そしていつのことだったかは知らないけれども、亡くなっていたのです。路傍での孤独死だったと聞きます。

誰も引き取り手がなく、アサヒの常連の一人が引き取り彼を知る常連たちが集まっての見送りになったそうです。
  
その話を聞いてわたしは少し堪えました。
随分若い頃、20代も半ばを過ぎる頃までのわたしは、若気の至りで「例え明日、この身の命が無くなってもいい」くらいの無茶な意気込みで、日々を、あの頃にしてみたら一生懸命、しかし、今振り返って見ると無謀にしか見えないような生き方をしていたものです。「例え路傍死しても」との思いがあったのも若さゆえだったと、今にして思います。

「路傍死」
その言葉に記憶があるわたしは、A.D.のその孤独な死が堪えまして涙が後から後から出て止まりませんでした。
ADが若い頃どんなボクサーだったのか、誰か覚えている人はいないのか、今となっては知る由もありません。

「アサヒは人生のるつぼ」だとわたしが思うひとつのストーリーであります。

A.D.に、心をこめて、合掌します。


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コメント
私はまだこちらに来て9年ぐらいです。日本の底辺を経験してからこちらに来ました。一度挫折した人間は受け入れられず、その受け皿の派遣業界では人間扱いされず・・・ それに比べれば、ポルトガルはまだましな気がします。感覚的にまだなじめませんが・・・
2015/02/15(Sun) 03:41 | URL | Ganchan | 【編集
Ganchanさん
コメントをありがとうございます。
一度苦労してそこから這い上がった人は強いと思います。人への思いやりも持てます。

今の日本人の性格形成のターニングポイントはバブル期にあるのではないかなと時々思います。わたしはその時期、こちらにおりましたが、まるで狂乱かと眺めていました。自由主義の発展の行き着く先は、おおまか、こんな風になるのでしょうか。

みながみな、そうではないでしょうが、本当ににわたしたち日本人にとって家族ってなんなのだろうかと、この本を読んで考えさせられます。

ポルトガル在住9年とのこと、これからですね。日本だったらこうなのに、と気になるところを母国と比べなくなり、段々この国の良さが見えてくると思います。また、そうでないと楽しい生活はできないのではないかと思います。

お仕事、お励みください。また、ポルトにおいでの機会がありましたら、声をかけてくださいませ。
 
2015/02/15(Sun) 18:54 | URL | spacesis | 【編集
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