2015年3月10日  

今は日本に住んで10年になる娘が、ポルトの私立高校12年生の学年末試験も終わったある日のこと。気分的に余裕があったのか、突然、「おっかさん、高校時代にどんな詩を書いてたん?」と、おいでなすった。

仕事で丁度パソコンに向かっていたわたしは、ちょっと照れくさかったけれど、
画面に「え~と、そだね。例えばこんなのとか。」 パチャバチャバチャとキーボードを打ち出す。  
                        
「あとね、こんなんもある。」
「それから、これは数十年温めていて、まだ完成してないのだ。」
「えっと、これは自作の詩の中でも気に入ってるヤツ。作ったのは20代の時だが、あんたの兄貴が生まれたときに、この詩をあげた。おほほほほ」  
「へぇ、意外と哲学的な詩なんだ。」とモイケル娘が言う。 

愛だの恋だの、あなただの好きだなどの言葉は、それらの詩には見あたらない。使ってる一人称言葉も「わたし」でなく、「ぼく」だ。

それから母娘で話が広がり、わたしは話の弾みに好きだった青春時代からの愛読書である蜷川譲氏の「フランス文学散歩」と堀秀彦の「現代に生きる古典」、2冊の文庫本をわたしは書棚から引っ張り出してきた。 仕事はこの辺りから放ったらかしだ(笑)

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その2冊の本は表紙がボロボロで中身は既に黄ばんでいる。なにしろ2冊とも初版が昭和34年、1959年になっているのだから。わたしが18、9歳の頃から愛読書としてきたこれらの本がどんな経由を辿って手に入ったのか、覚えていないのである。

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「現代に生きる古典」はその名の通り、論語を始め、パンセ、デカメロン、新曲、ボバリー夫人、カラマーゾフの兄弟などの海外名著に加えて、徒然草、福翁自伝、花伝書、曽根崎心中をも取り上げている。
「古典は書物の源流である。そうであるのは、人間の本質が今も昔も大して変わらぬからだ」と、この本の序章で著者は書いてあるのが印象深い。


もう一冊の「フランス文学散歩」は、「ラ・フォンテーヌ」「星の王子さま」、コレットの「青い麦」、そしてわたしが高校時代夢中で読んだサガンの「悲しみよ今日は」、「狭き門」「赤と黒」「谷間の百合」エトセトラエトセトラ、フランス文学のさわり部分が読める。

さて、親バカが、娘をひっつかまえて、ついつい文庫本に書かれてあるアラゴンやエリュアールの抵抗詩の断片箇所を、
「ねね、ほれ。ここ、この詩。好きだったんだよ。読んでみぃ~」と押し付け^^;

そうして久しく忘れていた胸高ぶる青春時代の思いもよみがえり、仕事の教材作成もうっちゃっといて、あの頃の自分と同じ年頃になった娘とこんな風に話をするようになったと思うと、心もホットになるというもの。

この本の中にある、わたしが18、9の頃、まだ意味を漠然ととらえただけなのだが、好きだったモンテルランの言葉。

     人生を前にして、ただ狼狽するだけで、無能なそして哀れな青春。
     だが今、最初のしわが額に寄る頃になって得られるのが、人生に
     対するこの信頼であり、この同意である、「相棒、お前のことなら
     わかっているよ!」と言う意味のこの微笑だ。
     今にして人は知るのだ、人生は人を欺かないと、人生は一度も
     人を欺かなかったと。

17、8で、人生の意味など分かろうはずもない。しかし、あれから半世紀たった今、改めてこの素晴らしい言葉に感動するのである。

この2冊の文庫本をわたしは今でも時折思い出しては、書棚から取り出してめくってみる。わたしの青春時代と娘の青春。時代の流れで違うところがあるにしろ、不変なものもあるはずだ。そのひとつが、「文学は青春の生命を謳いあげる」だと、わたしは思っている。

漫画、ゲーム、パソコンに取り囲まれた今の若者たちが、いったいどんな本に手を伸ばすのか、わたしは大いに興味がある。時代も風俗も違う現代の若者たちにとって、古典作品を手にして、ゲームや映画のように血わき肉踊るというような喜びはないかもしれないが、「古典を読む喜びは、川の流れで身を洗う喜びだ」と、哲学者ショーペンハウアーは言っている。

16、7の頃、わたしはレマルクの「西部戦線異状なし」にすっかり引き込まれて、嗚咽しながら読んだものだが、わたしの読書の原点はその本にあるのだと近頃思う。そして、多くの古典読書を通して今の自分が培われたような気がする。

一冊の本が与えるものは、大きい。  


今日のエントリーは10年ほど前に書いたものの、満足していなかったのを再度書き直してみました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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