2015年12月19日

ノンちゃんのグループは3日とあげずにビア・ハウスにやってきてはホールの一隅を陣取り、ノンちゃんの常人ならざる風貌と数人のお供を従えて来ることとで、たちまちビアハウス内で名の知られる存在になった。ゆえに、彼のリクエストでわたしは、しょっちゅうイタリア語の「雨」を歌う羽目になったのである。

カンツォーネ雨
黄ばんですっかり古くなってしまった思い出の楽譜。
   
どこにあったか、場所はさだかではないが、藤本儀一さんが行きつけの「zoo」というバーに、時折出入りしたのはこの頃で、ノンちゃんグループとつるんでの話である。言っておきますれば、藤本義一さんはアサヒビアハウスにおいでになったことはあるが、このバーでわたしが出会ったことはない。

TV、ラジオ放送が終わったら来るから待て、とノンちゃんたちが言うのだが、翌日オフィスの仕事を持っているわたしに、そんな時間まで待って「明け方の君」でいられるはずもないのである。しかし、このグループとはまったくもって、よく大阪北、南界隈を一緒に彷徨したものである。
    
さて、この一件から数年たって、渡米したはずが、移住を辞めてアメリカから帰って来たわたしは、広島に住む男友達と、岡山で待ち合わせ、見知らぬ通りを行き当たりばったり、外装に興味惹かれたカフェに二人で入った。

カフェは、夜はディスコに変わるのであろう。店内はとても広く天井が高くて床は板張りである。面白いことに、店の片隅にイギリスで見かける赤い電話ボックスがデンと突っ立っていた。
    
二人でコーヒーなどをすすっていると、ボーイさんがツツ~っとわたしたちの席に向かって来、
「恐れ入ります。お客様にお電話が入っております。」とわたしに言う。
    
「え?お客様にって、こんなとこでわたし知り合い、いませんよ。」
「はい、でも外国の方とご一緒の女性は、お客様しかいらっしゃいません。あちらの赤電話にお出になってください。」

えー!だって、こんなとこに来るなんて誰にも言ってないし、岡山は初めての町だし、いったいどうなってるの?と摩訶不思議な面持ちで出た赤電話の受話器の向こうから、
  
「お久しぶりでございます。ノンちゃんグループのワダです。念願叶ってボスに岡山でコピーライターオフィスを開いてもらいました。
今日たった今、向かいのビルにあるオフィスの窓から、偶然あなたがそこへお入りになるのを見かけたので、懐かしくてお電話を差し上げた次第です。」
    
そうです、ノンちゃんの付き人をやっていたあのワダちゃんからの数年ぶりの、思いもしなかったコールでした。あの頃と同じく馬鹿丁寧な口調だ。懐かしさが胸いっぱいにこみ上げてきたのは言うまでもない。このような偶然はあるのだ。
世の中広いようで、ホンマにせまいんやなぁ、とつくづく思わされた出来事であった。

そして、付け加えるならば、その時一緒にカフェに入ってコーヒーをすすっていた「外国の方」とは、言わずもがな、後のわが夫になる人であった。

LaPioggia、一件落着なり。

アサヒビアハウス 
La Pioggiaを歌っていた頃。この頃はまだドイツの民族衣装を着ていなかった。
 
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