2016年1月6日

「ほな、トクさん、お先に例んとこ行ってますわ。」

一日の勤務が終わって、帰り支度を終えた若い営業マンのザワちゃんが、オフィスのドアを開けながら最後に残っていたバッドチーフに声を言った!帰り仕度が終わってデスクを離れかけていたわたしは、「あ!ザちゃん・・・」と一瞬思ったが後の祭り。

わたしがステージに立つその日は、オフィスの所長とバッドチーフを除いて、皆で申し合わせ、ビアハウスで落ち合うことになっていたのである。

「例んとこて、どこや?」とバッドチーフがザワちゃんに問う。
「ゆうこちゃんが歌ってるとこですがな」

まな板の上の鯉とはこのことなり。わたしは二の句もつけず固まりましたです。ザワちゃんに口止めするのを誰もが忘れていたのだ。これでバレてしまった。わたしが歌姫のバイトをしていることが、である。
アサヒビアハウス
グッドチーフとオフィスの仲間たち

アサヒビアハウス
ザワちゃんと我が親友みちこ

当然のことながら、その夜はグッド、バッド、両チーフがビアハウスにお目見えし、盛り上がったのはいいが、わたしは覚悟しなければならなかった。原則としてはどこの会社もバイトは禁止である。バッドチーフの口から、バイト歌姫の噂が本社に入る前に、何か行動を起こさなければならない。

その数年前、ローンを組んでケンブリッジ語学留学のために、社員としてはおそらく初めて、一ヶ月の休暇をわたしが会社に申し出たときに、力添えしてくれた本社の専務に事情を話した。

「会社の給料だけでは、自活しているわたしに、アメリカ留学の資金はとても貯まりません。アメリカ留学がわたしの夢なのです。」本当を言えば、留学ではなくて「移住」なのであったが。

それからしばらくして、ある日の夕方、ビアハウスでマイクを持って歌っていると、東京本社から、その日、大阪オフィスに出張で来ていた件のボスの姿を客席の隅で見かけた。逃げも隠れもできない。もう迷うことはないと観念して、わたしはステージが終わるなり、ボスの席まで挨拶に出向いたのは言うまでもない。
 
以来、オフィスの同僚たちはもちろんのこと、時には大阪へ出張してきた本社からの上司たちの顔が、ホール内で時々見られるようになったのである。

本社からは何の沙汰もなかった。思うに、あの楽しき愉快なビアハウスの雰囲気が彼らをも魅了し、ここならいいか、と、わたしをこっそり見逃してくれることになったのではないかと、ずっと勝手に思っている。 わたしのアメリカ行きはこの数年後になるのだが、この事件の発端となったおっとり者の「ザワちゃん」は、後にわたしと夫の婚姻届の際、証人となり、そして彼とは、下記に引用するように、アメリカで奇遇なエピソードが待っていたのである。

いや~、人生ってまったくもって面白い!

ここから引用:「アリゾナの空は青かった」エピソード5:おどろ木桃の木

アリゾナ大学は、ソノラ砂漠にあるツーソンの町に位置する。当時は考古学、天文学でも世界に名を馳せる大学だということをわたしは知らずして留学したのであった。ツーソンは、北へ160キロのところに、州都フェニックスがあり、ソノラ砂漠を南へ100キロほど突っ切ると、やがてメキシコ国境、ノガレスにぶつかる。

わたしの大学での第一日目は、ESLクラス編成の試験であった。大学のキャンパスはNorth 2nd Ave,から近く、徒歩で7、8分の距離である。登校初日の朝、シャワーを浴び、すぐそばにあるマーケットで前日買い入れたコーンフレークスにバナナの輪切りと牛乳を加えての朝食を追え、8時過ぎ、わたしは「いよいよ始まるぞ!」と興奮で高まる胸をおさえ、キャンパスに向かった。

広いキャンパスの入り口近くの一角に、ESL(English as a Second Language)センターの建物はあり、そこの数箇所の教室で、クラス分けの試験である。留学生はメキシコ、ブラジル、ベネズエラなどの南米からのみならず、ヨーロッパからも来ていた。当時はオイルマネーを使ってのアラブ諸国からの留学生のなんとまぁ多かったことか。

受験票を渡されてウロウロと教室を探し回り、無事時間いっぱいに試験を終えて廊下に出てみると、各国のグループがかたまってお互いを紹介しあったりして廊下は人だかりでにぎわっていた。
すると、「あ、あれぇ~、まさか・・・まさか・・・」

日本人グループの中に見覚えのあると思われる顔が見えたのだ。そんなはずがあるわけもない、と疑惑の面持ちで、念のためにとかたまっているその日本人のグループに、わたしはそぞろ近づいて行ってみた。

「ほ、ほ、ほ、ほんざわちゃん!!」
このときの驚きたる!

本沢ちゃんとは、 大阪のオフィスで退職するまでの6年間、いっしょに仕事をしていた営業マンで皆から「ザワちゃん」と呼ばれていた同僚なのだが、その本人が目の前にいるではないか!

なんでやの?なんでざわちゃんがここにおるん?おどろき桃の木山椒の木とはこのことなり。あまりの驚きに人目も構わず右手人差し指で彼を指し、「ザ、ザワちゃん!」と日本語で叫んでしまったわたしでありました。

渡米前、12月のボーナスが出るや即座に退職し、それまでバイト歌姫として歌っていた大阪梅新アサヒビアハウスの仲間たちに盛大に見送られ、大阪のアパートを引き払って後、渡米するまで横浜のおば宅に居候して、羽田空港からわたしは飛び立って来たのである。ザワちゃんはと言えば、わたしのすぐ後に退職し、日を違えて渡米とのこと。

しかし、広いアメリカやのに、なんで、なんで同じ大学やのよ・・・
それをさて置いても、一緒に会社で騒いだ間柄なのに、なんで一言も「ボクも同じとこに留学すんねんで~」と言わんかったのやよ・・・

と、このように、大学第一日目からして、波乱万丈な留学生活は幕開けとなったのでありまする。
こんな偶然てあり?
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