2017年1月19日 夢をおいかけて(2)

わたしの日本語教室の生徒は15才から85才と年齢層が広い。

85才は先日拙ブログでも取り上げたドイツ系ポルトガル人のアルフレッドさんで、目下、わたしと一緒に「日本の心で読む百人一首」なる本を読んでいる人だ。ポルト、ドイツとそれぞれ離れて暮らした10年ほどを入れると、随分長い付き合いになる。

他は、高校生、大学生、サラリーマン、医者、料理人さん、空手道場の人達など、職種は様々だが、中には是非日本で働きたい、という若者たちもいる。

その中に、日本で働くことを夢見、わたしの元に通い始めて三年少しになる若者がいる。大学を出ていて英語ができるならば、日本で講師の仕事を得ることもさほど難しくないと思われるのだが、彼は大学向きではないようである。しかし、自分が興味を持つことには、実に熱心に取り組むタイプで、日本語の勉強はしっかりとして来る。

わたしは生徒が自分から言い出さない限り、彼らの職業云々はあまり質問しない。時に、日本語の授業をすすめる中で、その方面に話が向いたりすることがあり、若者H君の職業は、そういう話の成り行きで知ったのである。

意を決したように話したH君は、夜10時から明け方4時まで、市から請け負うゴミ収集処理業者での仕事をしているとのことであった。雨の日も風の日も、週6日、日曜日を除いては毎晩の仕事である。 「何も恥ずかしがる仕事じゃないですよ。」と言うと、「母も、何もしないで家にいるよりもしっかり仕事をする方がはるかに立派だと、言います」と返してきた。

ポルトガルで決められた最低賃金で働くのだが、いつか日本へ行きたいとの夢があり、そのための日本語勉強なのだと言う。大学は出ていないので、ゼロから始めなければならないのは承知だと、覚悟の言葉であった。

この話を聞いたとき、わたしは、随分昔のTVドラマだが、倉本聡が手がけて絶大な人気を得た長期ドラマ「北の国から」の主人公黒板五郎の息子、純と姿にH君を重ねた。

「北の国から95・秘密」で、純はH君同様、市のゴミ収集員の仕事をしており、ドラマの中で自分の匂いをしきりに気にした。H君もわたしのところに来ると、かすかにコロンの香りがしており、匂いを気にしてるんだな。匂いなどしないのに。と密かに思っているのである。

最低賃金で働き、わたしのところには週2回通いたいという。個人レッスンもわたしはかなり安く設定しているのだが、それでも彼の月の稼ぎの2割以上になることを知ったとき、「レッスン料半分値引き」を申し出た。
遠慮するH君に「値引きの分は日本行きの資金として貯めなさい」

こうして1年2年と教えていうるうちに、人擦れしておらず真面目、時におっちょこちょいの性格も分かり、普段はよそ様に対してあまり世話を焼くことをしないわたしが、何か手伝ってあげられることがないかと、ネット検索をし始めたのが、事の始まりである。

わたしのアメリカ行きは、もちろん、誰の手も借りなかったと言えばウソになるが、全て自力だったため、都会で一人暮らしをしながらの留学資金到達には時間がかかった。手が届くのに難しい夢も、ちょっとした手助けで実現に至ることもある。

H君とわたしとで、話し合ったり検索しあったりして、日本に1年間滞在でき、その間、バイトもできるというワーキングホリデイビザをようやく得、この春にH君は日本のとある場所で働くことができる。

H君、これがね、羽田空港のロビー、こっちは品川駅構内の地図、新幹線のホームはこっちの方向だよ、など等、ネットから地図を探し出しては、あれこれ口を挟んでいる近頃、世間をあまり知らなさそうなH君に、彼の母親同様、わたしも実は心配で仕方がないのだ。

が、若いのだ、夢を追って今できることを目一杯してみるといい。なぁに、ダメだなと思ったら、いつでも日本同様に美しいポルトガルに帰ってくればいいのだ。

porto

身長190センチのH君が、ひょろひょろと日本で活動する姿を思い浮かべると、どんな人生を拓いていくのか、楽しみでもあるのだが。渡日まで後6週間ほど、最後まで日本語授業で出来る限りのことを仕込みたいと思っている。

昨年結婚した娘には、「息子がひとり増えたみたいだね」と言われる始末であった。
にほんブログ村 海外生活ブログ ポルトガル情報へ blogram投票ボタン
コメント
羽田空港ですか!2〜30年、羽田近くに住んでました‥昔は物干しから飛行機が見えました
彼はどんな所に 住むのかな~などとわが子のように気になりますが
世界中の若者はいろんな所に出かけるべき!‥ところが日本の子は動かないんですよ~
外務省のページから日本にはポルトガル籍の人が900人位‥ポルトガルには日本人がその半分位在住と分かりました
シニアのポルトガル移住の動きは?あまり聞かない‥
老後の医療は日本が一番?と東南アジアから帰ってくるシニアの話ばかり‥
医療に頼らない老後ってありえないのかな〜と
お医者嫌いで死ぬまで医者に行かなかった父親を見習うつもりはありませんが....話がまとまらず‥また♪
2017/01/20(Fri) 21:51 | URL | みちこ | 【編集
みちこさん
コメント、ありがとうございます。

うちの甥は勤めながら休みをとっては外国旅行をしていますよv-290
行っていないところは、アフリカ、アラブ系の国とChina、オーストラリアでしょうか。

ただ、海外旅行はお金がかかりますので、その難しさがあると思います。わたしもそれで、渡米資金のために何年もかかり、やっとの時には30を過ぎていましたっけ^^;

シニアで退職後ポルトガルに住んだ人が何人かいましたが、結局帰国なさいますね。大きな問題は医療、それと言葉の問題もあります。

わたしが入院したのはお産の時の2、3日だけですが、異国で病気になるのは、さすがのわたしもちょっと不安になります。

夫がいるからこそ、今のところ心強いですが、一人になったらやはりやってけないでしょうね。

なんだかんだと長年住んでいますが、夫あり、子育てありだったからこそ、できたように思います。

また、孤独に絶えられる精神力も、海外に長年住むには、必要だというのがわたしの考えです。

医者要らずというのは、本当に幸運なことですよね^^
2017/01/21(Sat) 07:33 | URL | spacesis | 【編集
孤独
おっしゃる通り、移住は必然性が無ければ成立しませんね
そうです、マイルを使って年に何回も旅行する日本人はいっぱいいますよ‥ただし普通は1週間くらいのかな
仕事辞め世界一周旅行したよ、という本が売れる国そです(^-^)
そういう私も外国嫌いで、サンフランシスコに行ったのが十数年前で、やはり1週間!
海外留学は減少しているらしい‥というのも研究者になる場合は除き、4年で大学を卒業するのが美徳になっていますからね
今回ポルトガルに3ヶ月行くと云う、誰もノーコメントです(^_−)−☆で

2017/01/24(Tue) 15:43 | URL | みちこ | 【編集
みちこさん
3ヶ月海外生活、経済的にも時間的にもできる環境にいるということは幸運です!

是非楽しんでほしいですね^^
2017/01/25(Wed) 17:31 | URL | spacesis | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック
Click for Porto, Portugal Forecast 
ポルトガル ポルトの口コミ
ポルトガル ポルトの口コミ にほんブログ村 外国語ブログ マルチリンガルへ
にほんブログ村