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2018年3月15日 

大阪京橋から少しバスで行った所に住んでいた二十歳の頃、わたしは今で言う究極のミニマリストでした。家電家具類は布団を除いては一切なかったが、小さなプレーヤーとレコードだけは持っていました。わたしの生活から音楽を切り離すことは考えられないことでした。

玄関土間に続く3畳、6畳の部屋、それに当時ではめずらしい4畳半のフローリング台所がある文化住宅と呼ばれた住居です。一人暮らしのミニマリストにはとても広く感じられました。夫と出会う10年も前のことです。

福島区の小さな印刷会社の事務員をしていましたが、大胆にも京橋界隈で遊び、時々会社をズル休みもしたものです。すると、人情のある部長さんが都会で一人暮らしをしている若い娘を心配して、翌朝は車で出勤に迎えに来てくれるのです。事務所では営業の人たちにもよく可愛がってもらいました。

どんな夜遊びをしていたかと言うと、もっぱらサマセット・モームの作品ばかり上演する素人劇団のメンバーのシナリオライターや作家、役者希望の若者たちとつるんでいたのであります。劇団長は一度は劇団四季に席を置いたと言う人で、当時は京橋の繁華街に「エリーゼ」(と思う)と言うスナックバーを持っていました。みんなのたまり場は必然そこになります。

会社が退けてから彼らとつるんでは明け方まで営業しているカフェスナックなどで幼稚な人生論や芸術論を彼らと語り明かして遊んでいたのです。時に、シナリオライターから、ちょっとここのセリフ、読んでみてよ」などと頼まれることもありました。彼らの劇では「雨」「エドワード・バーナードの堕落」を観劇しました。

モームは表向きは作家としたがイギリスのM16の諜報員としても活動しています。わたしが最初に出会った彼の作品は、高校の英語教科書の「The luncheon(昼食)」という短編でした。

ファンだという女性とパリの格式あるレストランで昼食に誘うことになるのですが、彼女は「ひとつの料理しか昼食には食べないことにしてるの。~は特別だけど。」と言いながら貧乏作家の目の前で、次々と高級料理をたいらげていき、主人公は支払いに冷や汗をかくことになる「ランチ」を描いた作品です。

そんなわけで、モームには身近な思いを抱いていたのですが、彼を縁に面白いことが展開しようとは二十歳頃は想像だにしなかったのであります。

moghum2-2.jpg

画像は手元にあるモームの短編集で実は知り合った頃の夫が大阪のアサヒや書店で買い求め、
わたしがプレゼントにもらった分厚い原語のペーパーバックです。本の扉、右上には「Para Yuko do Carlos(カルロスからユーコへ)。1977年8月10日」と日付も書いてあり、下には彼のサインが見えます。

momu1-1.jpg

それで、今思い出したのですが、この日付、大阪の梅新の交差点でクソ暑い中、わたしが夫を2時間待たしたときだったのでしたっけ^^;(爆)

もう絶対いないだろう。でも、いちおう行って見ようと、実はこの日が初デートだったのでした(笑) 40年前になりますわな(笑) あのとき彼がしびれを切らして2時間後に待ち合わせ場所にいなかったら、今日のわたしはポルトガルにいなかったわけです。すると、息子も我がモイケル娘もこの世に存在しなかったわけで、よくぞ、夫、炎天下をじっと待ってくれたものだと、ひたすら感謝するのみです。

その一ヶ月後、夫は広島大学病院へ研究で移動し、会うのは大阪か広島で、一月に一度か二度の遠距離。やがて年が変わって1978年の1月に、今度はわたしがアメリカへ移住の夢を見て出発し、大遠距離に離れ離れになったのが、今こうして日本とポルトガルの文化の衝突もなんとか誤魔化しては、本日、結婚39年を迎えたのです。乗り越えて、って言う表現は合いませんね、わたしたちの場合。

乗り越えるためには、ぶつかり合って納得するところまで行かなければならない気がしますが、「フン!なんでぃ!いいわぃ」と、流すことが多いですから、やはり誤魔化してってことになりましょう。

口に出しては言いませんけど、粗忽者で直行型のわたし共に忍耐力でこの人生を一緒に歩いて来てくれて、ありがとう。

40年前に夫からプレゼントされたモームの短編集はわたしとともにアメリカへ渡り、日本へ一時期帰国しポルトガルへ来て、今わたしの本棚に納まっています。

モームよ、お前もページがすっかり黄ばんでしまったけれど、わたしたちもお前同様、40年の歳月を重ねたよ。
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