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2018年3月28日

生まれて初めて、「故郷」「日本という国が恋しい」と言う感情を知ったのは、異郷の地ポルトガルに嫁ぎ、里帰りができなかった初め3年間の時です。

実はアメリカ留学で自分の持ち金は全部使い果たしていたし、一人で義母やおばたち、それにわたしを含めた4人を養っていた、やっと専門医になったばかりの30を少し超えた夫に、里帰りさせてくれとは言えませんでした。

当時は飛行機代も今とは比べ物にならぬほど高かったのです。ましてやポルトガルは今以上に物価が低い国でした。国際電話料金もバカ高く、母に年に一度、正月にするくらいで、せっせと元気印の空港便を送ったものです。

わたしが話せた言語は英語と日本語のみ、ポルトガル語は全く知らずに来ました。ポルトガルでは今でこそ、他の国同様、英語が第二外国語になり、簡単な英語であれば、なんとか通じるようになりましたが、今から40年前は、ドイツ語フランス語が第二外国語でした。英語が少々話せるとて、通じる相手は周囲にたくさんいたわけではありません。

ポルトでたった一人の日本人です、町を歩くと、すかさず「chinesa、chinesa」(=シネーザ・中国人のこと)と指差され、それが「死ネー、死ネー」と聞こえたのには、こたえたものです(笑)

昨今のように、大学には外国人向けのポルトガル語コースもありませんでしたし、個人レッスンでも受けようものなら大変な授業料が請われました。冗談じゃありませんて。自分が持ち込んだたった一冊のブラジルポルトガル語の文法本があっただけです。

それも、日本とポルトガルの国柄の余りの違いにすっかり意気消沈してしまい、何年も何年もその本を使って独学することを拒否してしまった愚かな自分ではありました。

旅人である間は、また、一時しのぎの滞在である間は、そして、年に一度の割でせっせと帰国の切符を手に入れている間は、「やっぱり自分の国が一番いい」と言う安堵感にかき消されて、「ノスタルジア」という感情は、なかなか生まれてこないような気がします。そんな感情を誰もが学ばなければならない、なんてことはないのですがね。

2歳近くの息子を連れて3年ぶりに日本の地を踏んだときは、誠に感無量でした。機内から眼下に見える自分が生まれた国、飛行機が着陸する間、滂沱の涙が頬を伝い、隠しようがなかったものです。

「わたしの国、これがわたしが生まれ育った国」この言葉が頭をぐるぐる回って、湧き上がる感情をどうにも抑え切れなかったですね。

10年を一昔とすれば、あれから昔が四つ過ぎようとしています。ポルトでは、わたしは一番古い日本人で、昔を知っている「生き字引」なんて言われたりしますが、当時の昔を語ろうにも、昨今の若い人たちには、きっと興味のない迷惑な話になったりするでしょう。ほとんどそんな話を出すことはありません。

ポルトガルの男性を夫に持つ若い日本女性も随分増えました。「年に一度は日本へ里帰りさせてくれることを条件に」なんて話も聞いたりします。それを羨ましいとは思わない、と言えば少々嘘になるけれども、今日のわたしを築いた背景には、夫の家族と同居した最初のちょっと辛いと思われた6年間がチラリチラリと見え隠れします。これがわたしのポルトガルでの人生の始まりでした。

詩人星野富広さんがその花の詩集で言います。

「引き返す距離が長いほど、力を蓄える波の激しさ」

じっと我慢して久しぶりに母国の地を踏む喜びがどんなに大きなものかを、わたしは知っています。

ブラジルに移民として船で渡った日本人や異国へ渡ったポルトガル人たちの「ノスタルジア」がわたしは今、分かるような気がします。優しい記憶も苦い思い出も入り混じって、それらを超えたところに「郷愁・望郷」はあるのです。

ポルトガル語では、それを「Saudade」(=サウダーデ)と言います。

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コメント
春爛漫
お久しぶりで~す。
今、こちらは春爛漫、桜の花が今まさに満開の時を迎えています。
我が家から見える山も吉野山には遠く及びませんが、そこそこの数の桜が見え隠れして、毎年楽しませてくれますし、外を歩けば桜の木があちこちで花開きしています。
朝方にはうぐいすの声が・・・。
肌と耳に染み付いた季節感のひとつです。

今桜前線はどのあたりなのでしょう?

以前の記事で間に合いそうにないとおっしゃてましたけど。
どこかの桜に間に合えばいいですね。

日本の地で見上げる桜は、いかほどに感慨深い事でしょうに・・・。
ご帰国の折には思いきり日本を堪能してくださいね。




2018/03/29(Thu) 06:56 | URL | ぷいぷい | 【編集
ぷいぷいさん
お久しぶりです!そしてコメントをありがとうございます。

どこの春も美しいですが、日本の春は格別だと思います。花を見て楽しむのは昔からの日本人の特性でしょうか。

今年の帰国はいつもより遅くて、4月23日なのです。弘前に行くのがGW明けで、ひょっとすると、なんとか弘前公園の桜がみられるかも知れないと期待してるのですが、こればかりは天気のままですものね。

今、日本語生徒の一人が日本を旅行していますが、この間は鎌倉の桜をアップしていました。鎌倉もいいところですね^^
2018/03/29(Thu) 18:20 | URL | spacesis | 【編集
ふるさとの桜、待っていてくれるといいですね。

生徒さんが鎌倉訪問ですか?嬉しいです。
アップされた写真は八幡宮へ続く道、段葛(だんかずら)の桜でしょうか。
老木を全て植え替えたばかりなので、まだ少しさびしかったかもしれませんね。

生徒さん、人の多さにビックリされた事でしょう。
小さな町鎌倉に近郊の老若男女が、毎日!毎日!わんさか!わんさか!。

北鎌倉駅の狭いホームは危険でしょ!というくらいの混雑振りです。
なのに、夜になるとがら~んとしてしまいます。
鎌倉はあまり宿泊施設がありませんし、老若男女はご帰宅されますのです。


2018/03/30(Fri) 08:40 | URL | ぷいぷい | 【編集
ぷいぷいさん
コメント、ありがとうございます!

写真からすると鎌倉ではお寺を訪ねたりしたようですよ。今は関西に移ったと思いますが。

桜の季節はそんなに人が押し寄せるのですね。4月も終わり、5月にかけては少しは混雑から免れるでしょうか^^

ポルトは今日も雨模様で、スッキリしない天気が続いています。帰国したら思い切り動き回ろうと思っています!
2018/03/30(Fri) 20:13 | URL | spacesis | 【編集
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