2007年10月14日
2007年10月の夕焼け

★2007年10月の夕焼け

秋、山菜採りの季節になりました。この時期になると決まって思い出す
ことがあります。
それで、今日は古いエッセイを引っ張りだして来ました。以前読んだ
ことのある方はスルーしてください。以下。


大正14年生まれだった母は9人兄弟であった。

その長兄は太平洋戦争で若くして死んだと聞くから、戦後生まれの
わたしは知らない。
母を筆頭に8人兄弟となり、7人がわたしの叔父叔母になる。
わたしと妹は、このうち二人を除いた5人の叔父叔母と一緒に、祖母が
構える弘前下町の大所帯で、幼い頃を共に暮らしたのである。

母のすぐ下の叔父は当時すでに結婚していて独立、そして、女姉妹で
一番若い叔母が東京に出ていて結婚も間もなかったころであろう。

昭和も20年代の頃、日本の地方は貧しく、母は食い扶持稼ぎに、なに
かとその日の小さな仕事を見つけては家を空けることが多く、留守を
守る祖母が母代わりでもあった。わたしは祖母の初孫にあたるのだ。

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ー続きはここからー

その祖母は、秋になると山菜採りに山に入るのであった。
弘前の町からバスで昔なら2時間も走ったのであろうか、岩木山の麓
の嶽(だけ)へ温泉に浸かりがてら、キノコ、筍、ワラビなどの山菜を
求めて入山する。
祖母が採る山菜は毎秋ごっそりとあり、それらは塩漬けにされ長期保
存食料となり、時折食卓に載る。中でも断然おいしかったのは、細い
竹の子を入れたワカメの味噌汁であった。

後年この祖母の慣わしを引き継いだのが母と母のすぐ下の弟だ。
母も叔父もその季節になると、山へ入って行った。
そしてどっさり採った山菜をカゴや袋に入れては抱えて帰って来る。
だが、面白いことに二人が一緒に同じ場所へ行くことは決してない。
それぞれ自分だけが知っている秘密の場所を持っているのでだ。

これは釣り人が他には打ち明かさない「穴場」と同じである。
叔父は釣り人でもあったので、山菜採りがない週末などは、家人を
連れて早朝に川へ車で乗り付ける。

その叔父は、やがて採った山菜を知り合いの工場に頼み込んで、
瓶詰め缶詰にするに至った。
わたしが帰国する度に、弘前から缶詰の細長い竹の子やワラビなど
が宅急便で届けられるのである。

さて、母は60を過ぎてからの晩年を所沢にある妹夫婦の家族と共に
暮らしたのだが、そこでも近隣の林や森に入って山菜探しが始まり、
いつの間にかしっかりと自分の秘密の場所を見出して、秋になると
キノコやワラビを採ってきては所沢のご近所に配るようになった。
毎年それを楽しみにする人も出てきたものだ。
所沢に移ってからも、70半ばまで脚が元気なうちは、弘前の田舎へ
帰り毎年のように山での山菜採りは続いていた。

母より若い山菜ライバルの叔父が先に身まかった時、言ったもので
ある。「とうとうわたしに秘密の場所を明かさないで、あの世へ持って
行った。」と。そういう母も生前の叔父に自分の持ち場を明かすことは
なかったようだ。

母が亡くなった今、祖母からの、いや、恐らくはそれ以前のご先祖様
の代からの山菜の見つ方、見分け方、そして秘密の場所の秘伝は
母の代で途絶えてしまったことになる。

都会に出たわたしは、母や叔父が採ってきては、味噌汁や煮物にした
かの細長いしなやかな竹の子を一度も見かけることはなかった。
母も叔父も隠し通し、あの世まで持っていってしまった二人の宝の秘
密の場所はいったいどこだったのか。
考えると、なんだか可笑しさがこみ上げて来る。
そして、そんな可笑しさを胸に留めながら、わたしはいつも、倉本聡の
ドラマ「北の国から」最終回のワンシーンを思い浮かべる。
生きるのに不器用な主人公、黒板五郎が二人の子供に遺言をしたた
める場面である。
「金など欲しいと思うな。自然に食わせてもらえ。」

海の幸山の幸を自ら捨て去り自然の恩恵を受けて生きることを葬って
来たわたし達現代人には到底書けない、素朴でありながら、しかし、
ずしんと重みのある遺言だ。

祖母も母も叔父も、海の幸山の幸を知る人であった。
コメント
山菜のてんぷらたべたいーー
「北の国から」は前に全部一気に見ました^^
いやー竹下景子が若い若いって
みんな若かったけどw
「遺言」が最終回だそうですけれど
続編でるんじゃないかとちょっと期待してるんですけどねー
でないかなぁー
2007/10/16(Tue) 01:09 | URL | ぎたれれ | 【編集
北の国から
>ぎたれれ君

あのドラマはよかったよね。
わたしは、大友柳太郎が演じた「へなまずれ」だったっけ(^^;)、
あの爺さんが出るエピソードがもの深く印象に残っています。

自分の老馬を売り払った場面などもうどうにもならんくらい、
切なくなる^^;
あのエピソードを見ると、胸が詰まって鼻ずるずるです。

あの続編は難しいぞ^^
日本版「大草原の小さな家」だね。北の国からは。
2007/10/16(Tue) 09:41 | URL | spacesis | 【編集
じぃ~んときますね。
あの世にまで持っていったってとこが
なんともいえず・・・
すごいですね。
私なんて毒キノコくらいしか見つけられないよー。
2007/11/04(Sun) 23:24 | URL | syomin1 | 【編集
>syominちゃん
毒キノコってカラフルできれいなのもあるのね。

ポチポチのあるきのこを見つけ、子供たちと一人ずつ
カメラを持ち替えて写真を撮った事がありましたよ^^
まだ写真箱に入ってるはずだ。
今度引っ張り出してみようw

山菜や釣りの穴場をそのまま抱えて行くのは、
ほんと、可愛いわ^^
あの世まで持って行くもの、多かれ少なかれ誰にでも
ありそうね。それはそれでひとつの人生なんやから、
ええんじゃないかな、なんてええように考えるわたしは、
お気楽人間かな(笑)

syominちゃん、ここでも合格おめでとうさん!
2007/11/05(Mon) 01:49 | URL | spacesis | 【編集
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